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花とアリス殺人事件(面白いアニメ制作技法)


「宇宙から来た少女」「私は、神」少女はそう言った。「宇宙から来た少女」シリーズ。宇宙から来た不思議な少女と周囲の人々が織りなす、突拍子も無い物語が始まる!

今回は、2015年2月20日に公開される「花とアリス殺人事件」について書いてみたいと思います。

花とアリス殺人事件 公式HP リンク

 

この作品は…

2003年にネスレのキットカットの日本発売30周年を記念して同社が運営するHPにてネット配信された短編映画作品「花とアリス」

ネスレ キットカット 「花とアリス」 リンク

が元になっています。 その後、2004年に長編実写映画「花とアリス」がこの短編を元に作成されました。

 

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今回公開される「花とアリス殺人事件」はこの「花とアリス」の前日譚で、花こと「荒井花」と、アリスこと「有栖川徹子」がどのような経緯で出会ったか? が描かれます。

 



 花とアリス殺人事件 ものすごく良く動くアニメーション

今回の作品「花とアリス殺人事件」の予告を見て驚きました。w

ものすごく動く。 そしてリアル。

「なんだこれは?」 というレベル。ww

ちょっと「見る人によっては、(動きすぎて)気持ち悪い」と思われるかも知れません…。w

実はこの作品「ロトスコープ」という手法を使い、ものすごい時間とお金をかけています。w

最近のアニメ作品には既に多くの3D映像をToon処理してアニメの中に取り込むものが増えました。 アニメは手書きであるが故に嘘をつくのが得意です。 しかしそれは悪い事ではなく… コマを落として素早くリズミカルに動かしたり、リアルなカメラでは撮影不可能な絵を描いたり…。

しかし、そこには「一定の気持ち悪さ」が生じます。 それは「嘘であるが故の気持ち良さと、嘘であるが故の気持ち悪さ」の両方が存在するという意味です。

通常、アニメ作品に3Dを用いる箇所は限られていて…。

構図が難しい(嘘になりやすい)箇所に3Dを使う

というのが鉄板です。
見ていて分かりやすいのは「車が移動する・電車が移動する・それらの映像を映しながらカメラが移動する」などの移動物を撮影するカット。 このようなカットに3Dが用いられます。 理由は簡単で「手で書くと構図が変になりやすく、変に見えるくらいなら、3Dで作った方が確実で結果的に安くなるから」です。

そして今回の作品「花とアリスの殺人事件」では3Dを用いらず、ロトスコープという手法が使われました。

このロトスコープは、3D業界の人なら良く知っている言葉なのですが…。 「元素材となる静止画や動画を3D画面の裏に表示させて、それを下絵にして3D映像を作る」という方法です。 しかしこの方法を、手書きのアニメ業界で「長編映画全編にわたって使われた」というのを聞いたことがありません。w

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花とアリスの殺人事件のロトスコープ手法

実はこの作品のロトスコープとは…

先に実写を撮影して、それを下書きにアニメを書く

という手法なのです…。
なんという手間と時間(当然お金もw)のかかる作業でしょう…。 (アニメの制作会社さんがどこなのか書かれていないのでわかりませんが)作業をされている方…本当にお疲れ様です…。orz

しかし、その優位性は今回はっきりと証明されました。 出来上がった絵がものすごくリアルに動きます。b(^o^)

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なぜ「実写を撮影したのか」?

理由はまちまちだと思いますが…個人的にはこう思います。(^_^;

  • 思い通りの絵にならない(カメラワーク・構図)
  • 大人数で製作するアニメーションは絵コンテがあっても、すべてのカットを繋げると、クオリティーの差が出てしまう(それの修正に非常に時間がかかる=お金がかかる)
  • 3Dではなく、アニメで作品化したかった

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思い通りの絵にならない

実写は実写の良いところがあります。 大軍勢を作るとき、3Dが楽だと思われがちですが、「楽をしようとしたら、いい絵にはならない」ので、結果的には大量の人間モデルを配置して「同じ動きが並ばないように作る」必要があります。 しかし、実写なら全員違う人なので、基本的に同じ動作で同じ顔の人が同時に出ることはありません。

そして重要なのが「カメラワーク」です。 実写のカメラ(3Dも同じようなものですが)はカメラマンが撮ります。 監督が「こうしたい」と言ってもカメラマンが承知・納得しなければそのようなカメラワークをしてもらえません。 ここが監督の悩みどころなのです…。

(私が思うに)今回、岩井監督が行ったのは「自分でビジュアライズ(プレビュー:実写見本)を撮影する」事でしょう。 それによって「自分がやりたかったカメラワーク」を、かなりの確率で自分の作品に取り込む事ができます。 そして(役者さんにはお金はかかりますが)、そのビジュアライズの撮影には(役者さんと監督と見本になる小物と場所があればいいので、実際の実写撮影と比べれば)「ほぼお金がかかりません」。

但しこの方法は時間がかかりますし、お金がかからないと言っても「本来(ロトスコープをしないで)作るよりもお金がかかる」事になるのです。

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大人数で製作すると、カット単位(製作単位)でクオリティーの差ができる

アニメ作品は長編になればなるほど、アニメーターが大人数で作り上げます。 基本的には「キーアニメーター」と呼ばれる人が動作の基準になるコマを書き、動作と間を作ります。 その後「ビトゥイーン(補完)アニメーター」がキー(基準コマ)を補完して絵を作ります。

これを、作品中キリの良いカット単位で分担するのです。
これによって効率化は図れますが、実際には書くアニメーターの技量・好みによって大きくクオリティーが左右されます。

そしてこの「監督自身がやりたかったものではないものが上がってきてしまった」場合、「全て分かっている自分が直すしかない」ので、(基本的には指示を出しますが)監督が一人で全てのカットを思い通りに作る・修正を行うというのは楽な作業ではありません。 基本的に監督は、時間と体力と根気の戦いになります。

これを「ロトスコープ」を使うことにより、修正指示が「ビジュアライズと合ってない」の一言で済むのです。

また、ビジュアライズは既に編集されて「基本的なリズム尺」が決まっています。 本来であれば「後編集」されるものなので長めに作って後で切る(編集する)のですが、このビジュアライズでリズム尺が決まっており、カメラ構図も人の動きも決まっている(見本がある)ということは…。

キーアニメーターが必要ない

ということなのです。 一人も要らないわけではなく、かなり減らせるという方が正しいでしょうか。
キーアニメーターはアニメ作品では重要な存在ですが、ビトゥイーンアニメーターの倍以上のお金がかかります。 これによってアニメーターのコストが下げられるのです。

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3Dではなくアニメでやりたかった

3Dには3Dの、アニメにはアニメの利点欠点があります。
3Dで作る場合「アニメよりもより作り込める」と思われがちですが、違います。 3Dには「モデル」という制限があり、予定以上の動きをさせると「壊れる」のです。

そしてアニメでは「何をしても壊れない。変に見えなければいい」という利点が存在します。

それが一番際立つのは「顔 表情」です。

勿論その場合「アニメーターが出来る人である」必要がありますが、思った通りに動かすことができるか? そしてそれでもモデルが壊れないか? が最低限必要で、そこに「時間」が絶対的に必要になります。

アニメでも、実写でも、時間=お金 である場合が多く、そうでない場合(グロスでの請負)もありますが、基本的には「◯回以上はリテイクできません」と言われて困るのは監督です。w そして、表情の表現という意味では…

実写では配役が非常に重要で、どんな役者さんに演じてもらうか、どのように役を伝えるか、演じてもらえるか などの多くの問題があります。 故に(乱暴な言い方ですが)「シナリオと監督と役者さんのイメージがマッチした作品には、主演賞などが付く」と言ってもいいと思います。 そしてそれぞれの役者さんには「元々イメージ(役者の個性)が存在する」ので、さらに難しくなります。

また、表情はその役者さんの出来る表情でしか表現できません。 また、見ている人(人間)は表情から、微妙な喜び・悲しみ・迷いを表情から読みとってしまうので、微妙な表情をすると「見ている人が入り込めなくなる(撮影現場の状況が見えてしまう)」場合が多いのです。

そしてこれがアニメの場合。 ニュートラルなイメージで作品を見てもらえ、その上で行動やセリフからそのキャラクターへの感情移入を直接映像から受け取ってもらえる。

つまり、元の素材(本・脚本)から全てを読み取ってもらうことができるので、本の意図と映像表現のズレが最小限で済みます。

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この作品「花とアリスの殺人事件」は、岩井監督の最初の長編アニメ作品のようですが、実は岩井監督は…

「やっと思っていた通りの物を作ることができた」

という実感があるのではないか? …と思っています。w
今回行われたロトスコープによるビジュアライズはかなり有効な手法ですし、絵も思い通りに作れたとしたら、非常に伝えやすいものになった筈です。

原作・脚本・音楽・監督を岩井監督が行われたこの作品、必ず良いものに仕上がってくるのではないでしょうか?

今から、とても期待しています。(^o^)/

花とアリスの殺人事件
2015年 2月 20日 全国で公開されます。

 

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